2013年5月27日月曜日

八重丸水産

先日、いの町で高知県産業振興計画シンポジウムが開催され、話しを聞いてきた。

高知県内4箇所で開催されていたようだが、私が参加したのは仁淀川地区の事例紹介を含めたもの。地元の会社がプレゼンすることと、県の産業振興に関するスタンスを聞いておくことには意味があるかと思い参加した。正直なところ何かを期待しているわけでもなく、単なる現状認識である。

というわけで話しを聞く。

県の計画は知事が直々に発表する。こういうところを人任せにしないところから産業振興に力を入れている姿勢が見えるが、内容については論理構成が甘く、問題提起から既に疑問符がつく。人口減が比較的大きいという入り口から地産外商ってどういうこと?といったところとか。また、どこでもやっていそうな話しで他の自治体との差別化ができているかと言えばきっとNOだろうことも残念。産業振興計画に基づく各種支援事業は有効に使えるところにはいいのだろうけど、潰したほうがいいようなゾンビ企業を延命することにもなるんだろうと思う。まあこれは自治体の性格上仕方ないのかもしれないけど。

#しかし、自治体関係の問題提起ってみんなこんな感じだな。以前地域おこし協力隊の集まりに出た時もこんなだったし。結局問題提起と関係ないところで都合のよいところを抽出して成果が出たってことにしてしまうんだろうね。

続いて産業振興の補助事業を採用した企業の事例紹介。ここでびっくりしたのが幡多郡大月町の八重丸水産。追手筋の日曜市で干物を販売する会社で、県の補助を利用して「きびなごケンピ」という商品を開発/販売している。資料には他愛もないことしか書いていないが話しの内容がすごい。干物の売上が落ちる夏場に市場の客が何を買っているか観察して芋けんぴが売れていることを見つける、自分たちの持っている資源を生かした芋けんぴの代替品を開発する、東京の販促イベントで「わからないことがわからない」自分たちに気づく、商品の性格を考えた上で安易な増産をしない、など。これらは言葉にすれば簡単なようにも思えるが自分のこととなるとなかなか容易にできないもの。それなのにちゃんと問題を自覚した上で解決していくということを実践して成果を出しているのだ。いやあ、これは本当にすごい。まさかシンポジウムでこんな話しが聞けるなどとは夢にも思っていなかった。

でも、この話しをすごいと思って聞いていたのはきっと場内で私だけだったのだろうと思う。パネルディスカッションで司会のアナウンサーが「日曜市まで片道3時間は大変でしょう?」と質問(この質問を事業者にすること自体がナンセンス。新幹線通勤のサラリーマンにでも聞いてろよ)したときに八重丸水産の中野さんが「背に腹は変えられません」と答えた。その時になんと会場では笑いが起きたのだ。18年間続けてきて、顧客の顔が見れる大事な市場として考えているだろう日曜市だからこそ苦労してでも続けていこうということなのだろうに、そこでなぜ笑う?まあきっと笑ったヤツらは人数合わせで出てきた役人の類で、苦労して事業をやっている人たちを安全な位置から見下ろしていたんだろう。だからこういった苦労を厭わない人のことを笑えるのだろう。こういう人種が地域の産業振興に関わっているなんて考えただけでもゾッとする。

というわけで、シンポジウムの話しなどもうどうでもよくなり、すっかり一目惚れしてしまった八重丸水産の名物「きびなごケンピ」を早速購入。

味付けは醤油と砂糖がベースになっており、時おり芋けんぴのようなサクサク感を得られるところが面白い。基本的には見た目から想像できる味だが、濃い目でありながら食べやすくハマる。私は2日で3袋食べてしまった。

というわけで、しばらく八重丸水産から目を離せない。来週の日曜市でインタビューを申し込んでみようと思う。それ次第では研修させてもらえないかお願いするかも。